産 地
徳島県徳島市
特 徴
布面にしぼのある、先染の木綿縮。経糸と緯糸の張力の不均衡を利用してしぼをつくり出す。
阿波藍のさわやかな色調と肌触りがここちよい。安価でもある。
用 途
夏の着尺地、室内着用服地、小物類。
変 遷
江戸中期から阿波地方に伝わる湛縞に改良、工夫を加えてできあがったのが、阿波しじらである。
湛縞は夏の着物用として各家庭で織られていた綿織物である。
ある夏の日、海部ハナという人が、織りあがった湛縞を干しているところへにわか雨が降った。雨にあたった湛縞の表面には、こまかいしわができ、縮のようになった。これにヒントを得てハナが創出したのが、阿波しじらである。阿波しじらの名は、明治二年につけられた。
原糸を藍で染め、手織をした木綿縮の阿波しじらは、たちまち販路を拡大し、最盛期には二百万反の生産量を誇ったが、ほかの織物の進出や戦争の影響などにより、昭和一二年には生産が中止された。
昭和二六年には復活し年々増産されたが、昭和四八年以降は衣生活の変化により和服衣料としての需要が減少、実用性を失った。
現在、阿波しじらは県の重要無形文化財としての技術指定を受け、藍染による民芸織物としての位置を保っている。
また、ハナは阿波しじらの発明により、明治一六年に農商務大臣・西郷従道(西郷隆盛の実弟)から発明功労賞を授与されている。