染と織地域別辞典

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有明天蚕紬(ありあけてんさんつむぎ)

産 地

長野県松本市穂高町有明

特 徴

天蚕は、山繭とも呼ばれるヤママユガ科の昆虫の繭。この天蚕の繭と家蚕の繭からとった真綿を合わせて手で紡いだ糸を緯糸に、絹糸を経糸に用いて織る。
絹なりがして、上品な薄緑色の光沢がある。軽くて丈夫であたたかい。

用 途

着尺地。

変 遷

天蚕の飼育は、天明年間(一七八一~一七八九)に有明地方のクヌギ林で始まった。
文政年間(一八一八~一八三〇)には商品として軌道にのり、明治初期から中期にかけては有明村の農家の五〇パーセントが天蚕飼育農家となり年間八百万粒の繭を生産するほどになった。しかし明治時代の後期から、害虫の発生や焼岳の噴火灰などが原因で衰退した。
天蚕自身が病気に弱いことや、戦後、天蚕の主食であるクヌギ林が減少したことなどから増産は難しいが、関係者の努力により、現在でも少量ながら天蚕繭が生産されている。
なお、一〇〇パーセント天蚕の紬はない。天蚕紬の繭の混合率は、天蚕一粒に家蚕十粒の割合である。天蚕の繭を一〇〇パーセント用いた紬をこしらえたとしたら、その紬の価格は、染める前に一五〇万円を超えるだろうといわれている。
古代あしぎぬは天蚕の糸で織ったものと考えられる。

有明天蚕紬(ありあけてんさんつむぎ)画像01 有明天蚕紬(ありあけてんさんつむぎ)画像02
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