産 地
岩手県盛岡市,下閉伊郡岩泉町,西磐井郡花泉町
特 徴
紫根や茜を染料として絹や木綿地に染色したもので、紫系が中心の、色彩の美しい縞柄の織物。 後染(布染)の絞と、先染(糸染)の紬がある。手紡ぎの紬糸を紫根などの植物染料で染め、手機(高機)で織る。 糸染は、紫根染で行うために、南部紫根染とも呼ばれる。
用 途
着尺地、帯地、夜具地、座布団地など。
変 遷
この地方では奈良時代から、自生の茜や紫根三百年の歴史をもつ織物。起源は明らかではないが、付近の山野で良質の紫根が採取できることから発達したものと思われる。江戸時代末期頃までは、藩の庇護をうけ南部藩の特産品だった。
江戸時代の寛政年間(一七八九~一八〇一)に幕府への献上品として用いられたことがきっかけとなり、南部紬の名は世に知られるようになった。縞柄は、その後、京都から技術者を招いたことで誕生した。
現在、布染は盛岡市の藤田家が、糸染は下閉伊郡岩泉町の八重樫家がその伝統を維持している。
しかし、伝統的な岩泉南部紬は、県の無形文化財にも指定されている八重樫フジさん、フキさんが高齢になったために織られていない。
花泉南部紬(西磐井郡花泉町)は、その伝統を継承した小野寺信平氏が現在も織っている。
染色法
染料は紫草の根と茜の根。媒染剤には錦織木(ハイノキ科の灌木)の灰汁を用いる。
◆後染◆
*布地に青花(ムラサキツユクサの花からとった汁)で下絵を描き、木綿糸で縫い巻絞り、竹巻きなどの手法で絞る。
*染液に浸して染色をしたのち、糸をほどいて湯のしをする。
◆先染◆
*糸を灰汁に浸して天日でかわかす作業を三回、次に豆汁に浸して同じ作業を三回行って下染をしてから一年間枯らしておく。
*本染は染液に五、六回漬けて陰干しし、手機で織る。