産 地
愛知県名古屋市緑区有松町、鳴海町
特 徴
有松、鳴海地方で生産される木綿の絞染。現在は絹物や洋服地にも応用されているが、かつては浴衣や手拭いに用いられていた。
変 遷
慶長年間(一五九六~一六一五)に名古屋城の築城に参加した有松の竹田庄屋九郎が、豊後の藩士や石工たちの絞染の衣服を模して、三河木綿で豆絞の道中手拭いを染めたのが始まりだという。また、有松絞の発展の礎を築いたのは豊後から有松に移住した医師・三浦忠玄の妻女で、彼女は土地の人々にくくり染の技法を教えた。
やがて有松絞は、宿場町という地の利も手伝って、尾張藩の特産品としての名声を得るに至った。品質が改良され種類も増えて、藍染だけでなく紅、紫などの染色も行われた。
元禄年間(一六八八~一七〇四)に湯上がりに浴衣を着る習慣が定着し、絞染の浴衣が発売されると、有松絞は全盛期を迎えた。
染色法
*下絵 白生地に型紙をあて、青花液(ムラサキツユクサの花汁)を刷り込む。近頃は代用花(合成液)を用いる。
*絞くくり 絞の加工はほとんどが主婦の内職による。絞の技法はおよそ百数十種類あり、各地域、各人ごとに専門の技法をもっている。おもな技法と、その技法が用いられる製品の種類は次の通りである。
縫い絞…日の出絞、白影絞、杢目絞など。
手筋絞…柳絞、みどり絞、竜巻絞など。
蜘蛛絞…襞取蜘蛛絞、機械蜘蛛絞など。
三浦絞…疋田三浦絞、石垣三浦絞など。
巻上絞…竹輪絞、皮巻絞、帽子絞など。
板締め絞…雪花絞、菊花絞、村雲絞など。
鹿子絞…本疋田絞、一目絞など。
嵐絞…松風、亀甲、羽衣など。
箱染絞
桶絞
*染色 花抜き(青花液を落とすこと)を終えたら染色をする。以前は藍などの植物染料で染めたが、現在は化学染料で浸染する。
*仕上げ 十分に乾燥させてから、くくり糸をとり除き、湯のしをして幅出しをする。