染と織地域別辞典

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黄八丈(きはちじょう)

産 地

東京都八丈島八丈町

特 徴

植物染の縦縞または格子縞の絹織物。黄色、鳶色、黒の三色に染めた糸を手織で織ったもの。それぞれの糸の濃淡や組み合わせで、多彩な縞柄や格子柄を織りだす。すべて手織で行われ、また例外なく草木染である。軽く丈夫で、艶がある。
黄色を主とする黄八丈、鳶(茶)色を主とする鳶八丈、黒の多い黒八丈の三種類があるが、これらを総称して黄八丈と呼ぶこともある。

用 途

着尺地、はんてん地、丹前地、帯地、ネクタイなど。

変 遷

平安時代には白生地の八丈絹が織られていた。室町時代には黄紬の名で貢物として、江戸時代には黄紬または八丈縞として年貢に用いられていた記録がある。
江戸中期頃までは大名家などの限られた人々しか着られなかったが、文化年間(一八〇四~一八一八)、文政年間(一八一八~一八三〇)の頃には一般化し、庶民にも愛された。江戸末期から明治初期にかけて大流行し、この頃から黄八丈と呼ばれるようになったという。

染色法

染色に用いる植物はそれぞれ違い、黄八丈には八丈刈安を、鳶八丈にはマダミの樹皮を、黒八丈には椎の木の樹皮を用いる。
◆黄染(黄八丈)◆
*乾燥した刈安を四、五時間釜の中で煮て、その煎汁をとる。
*熱い煎汁に糸を一晩漬けておく。
*翌朝、煎汁を絞り天日で干す。
*この工程を十六回ほど繰り返したあと、椿と榊の灰汁に浸して媒染発色させる。
◆樺染(鳶八丈)◆
*こまかく削ったマダミの樹皮を六、七時間煮て煎汁をとる。このとき、煎汁から煎じかすの樹皮をとり除く。煎じかすの樹皮は乾燥して焼き、灰にしておく。これをヤキバイという。
*煎汁にヤキバイを入れてかき混ぜる。煎汁は泡立って赤くなる。
*煎汁を糸にかけ一晩置いておく。
*翌朝絞って天日に干す。
*この工程を十五回ほど繰り返したあと、灰汁漬けをする。
*灰汁漬けには、一定量の水に溶かしたいろりの灰を用いる。
*以上の工程をさらに数回行う。つまり、煎汁漬け六、七回→灰汁漬け、煎汁漬け四、五回→灰汁漬け、煎汁漬け一、二回→灰汁漬けと繰り返す。
◆黒染(黒八丈)◆
*乾燥した椎の木の樹皮を六、七時間煮て煎汁をつくる。
*黄染と同様に煎汁漬けを十五回ほど行ってから、沼漬けを行う。沼漬けとは、鉄分の多い泥水に糸を漬け、鉄媒染することである。
*糸が泥水を十分に吸収したら、よく水洗いをしてから天日乾燥を行う。
*このあと、同様の工程を繰り返す。すなわち、煎汁漬け五、六回→沼漬け、煎汁漬け一、二回→沼漬けと行い、発色させる。

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