染と織地域別辞典

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越前墨流し(えちぜんすみながし)

産 地

福井県武生市

特 徴

水面に墨汁を落としてできた模様を、紙や布に写し染めたもの。
ふたつと同じ模様を染めることのできない自然の妙が、上品な趣味のお召しものの柄として好まれる。
染生地は越前鳥の子紙のほか、一越縮緬、塩瀬、羽二重などの絹織物。模様は正流、横流し、縦流し、渦巻きの四種類と、その組み合わせで構成される。

用 途

着尺地、着尺裏地、ネクタイ、壁紙、表装地など。

変 遷

墨は、推古天皇一八(六一〇)年に高麗の僧・曇徴により伝えられた。筆の伝来も同じく推古天皇(在位五九二~六二八)の治世中である。墨と筆の伝来後、貴族のあいだでは、墨流しは遊戯として行われた。
越前の墨流しの歴史は仁平元(一一五一)年に始まる。この年、大和の国の人、治左衛門が春日大社の神託をうけ「紅藍墨流し鳥の子紙製法」の秘伝を授かり、その製造に適する清水をもとめて諸国を遍歴、最適の水のある武生に定住し、初代・治左衛門となった。それ以来、墨流しの技法は一子相伝に伝えられ、現在の五十五代目の治左衛門にうけ継がれている。
墨流しはもともと和紙の染色法である。明治維新まで代々の藩主が墨流しを保護してきたが、布染への応用がなされたのは明治になってからのことであった。

越前墨流し(えちぜんすみながし)画像01 越前墨流し(えちぜんすみながし)画像02

染色法

染料には奈良の墨、正藍、最上紅花を用いる。
筆に含ませた染料を筆先から水面にたらして波紋状の紋様を水面につくり、その紋様を紙や布に写しとる。
三色のときには三本の筆を同時にもって使う行う。