染と織地域別辞典

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宮古上布(みやこじょうふ)

産 地

沖縄県平良市

特 徴

苧麻の手紡ぎ糸で織った麻織物。沖縄特産の泥藍で染織し、手織、砧打ちした上質の麻織物。
極細糸で織られているので、軽く堅牢で臘をひいたようななめらかさと光沢がある。精緻な絣模様が特徴的。そのため、一反を仕上げるのに二か月の時間を要する。
夏の着尺地として東の越後上布、西の宮古上布といわれる最高級品。

用 途

夏の高級着尺地。

変 遷

李氏朝鮮の正史である「李朝実録」の中に、一四七九年に宮古島で麻布が織られていたという記述がある。しかし、精巧な上布が織られ始めたのは一五八三年のことで、この年、琉球王朝から功績を認められて栄進した栄河氏下地真栄の妻、稲石が綾錆布を織り、王に献上したことに始まる。こののち、宮古上布は王朝御用布となり、色上布も織られるようになった。
宮古上布は、薩摩藩の侵略(一六〇九)をきっかけにして全国に広まった織物である。万治元(一六五九)年に薩摩藩は住民に人頭税をかけ、人頭税を支払う手段として宮古上布を貢納布に指定した。徴収された宮古上布は薩摩上布として江戸などに送られ、全国に知られるようになった。ただし、このころから色上布は減って、紺絣上布が主流となった。人頭税の開始により、精緻な織物が織られるようにはなったが、村役人の監視のもとで織物生産を強要された住民たちの生活は悲惨なものだったという。人頭税制は明治三六年まで続けられた。
また、明治八年には宮古上布はアメリカの博覧会に出品されている。
第二次世界大戦により宮古上布の生産は一時中断されたが、昭和二三年には再興され、手績み、正藍染、手織を条件とする重要無形文化財に指定された。*人頭税 住民の頭数に課せられる税金。宮古上布のばあいは、十五歳から五十歳までの女性にかけられた。病人、不具者などの例外なくかけられたので、働けない家人をかかえた家はとくに納税に苦しんだ。近年の人頭税としては一九八九年に開始されたイギリスの「ポル・タックス」の例があるが、立法後も民衆の大反対にあい、わずか二年のうちに廃止となった。

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